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●テーブルの下の秘密基地
” Secret Base under the Table”
2013




机の下の秘密基地
 子供の頃に基地を作ったことはないでしょうか?
いわゆる 自分たちのお気に入りの小さな隠れ家的空間である そこには宝物を隠し秘密と独
自のルールがあって 許された人のみ入ることができる大人から見ると子供の逃亡先であり 
現実社会の中で全くの虚構の世界が構築されている ただ小学生ながら ここには社会があり
真実があるように思えた
 私の生まれた子供のころの神戸/垂水は ベットタウンと第二次ベビーブームを伴って 友達
にことかかなかった 沢山いるが故 野球して遊ぶ時以外は少人数で遊んでいた 遊びの中で
もいたずらをよく楽しんだ 公園に全く継ぎ目の見えない落とし穴を作ったり マンションの対
面同士の二軒ピンポンダッシュをしたりした もちろんこっぴどく大人から怒られたのは言うまで
もない あらゆる発想を駆使し できる限りの笑えるいたずらを仕組んだ その一環で密やか
な企みをもったのが「 基地」である 
 住んでいる近くの団地の駐車場があった といっても今のようにアスファルトではなく でこ
ぼこの地面に黄色いロープを埋め込んで境界線を引いているが 原っぱといってもよい そこ
の裏手に崖があり 木が生茂っているそこに基地をつくることは恰好の場所である 
 先ずは友達との探検である 何度かカマキリを捕まえに行った場所であり卵を生むのを見た
のもここである 硬そうな棒を片手に 引っ付き虫はよいとしても イネ科の葉っぱで足を傷つ
けないように ウルシの葉を触らないように前に進んだ 
 少し下ると 四方茂みに囲まれた小さなバラック小屋があった 茶色い波トタンでできていて
入り口の扉があった ただここに来るための道など無い 何かの物置か? と見渡すと電信柱
から奇妙な感じで電気を引き込んでいる番地も表札も無く 電気水道のメーターもない 考え
ても謎が深まるのでドアをあけて中を覗いてみよう と友達になげかけた なすりつけ合いな
がら言い出しっぺの僕が戸を引いた 
 鍵は空いていた もともと無かったのかもしれない トムソーヤの冒険でインジャン・ジョー
の洞窟のシーンを読んだときと同じくらいドキドキして扉を開けた 部屋はかなり狭いが生活し
ているようで 中には薄汚れた家財道具がぎっしりあった よく見ると中には人がいた
 僕たちより少し年上の女の子である お互いビックリして声が出なかった小ぶりのテーブルが
あり そこの下で遊んでいたようで 散らかった小ものがあり テーブルの下の彼女の基地に
見えた この部屋の狭さからすると そこしか彼女の遊び場所がない といった風にも見えた
 僕たちは扉を閉めること無く 一即座に駆け出し その場から逃げた 
 未だに彼女の顔を忘れられない 硬直した表情と共に悲しそうな感じだった 我々は罪悪感
を感じ それから暫く基地計画は頓挫した 彼女の家なんだろうか? 道が全くないのに? 親
はいるのだろうか? あそこは部落だったのか? 色なことがわからないまま フワフワした感
覚と時が流れた
 この些細な事件からはじまったテーブルの下に隠された聖域は 今も心の中に響いて鳴り
止まない

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