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●羽のない妖精
"The Fairy Without Wings “

2005〜2013
For Film, Photo Works


「羽のない妖精」

 私の心臓は張り裂けそうだった。透き通った肌が唇と頬の赤みを際立てていた。それは人のように見えるが何かが違う。私に霊感があるわけではないし、足があったからお化けではないはずだ。近づこうとすると木の陰に隠れ、少し離れた木の影からまたこちらを覗く。

 昨年のまだ猛暑の残る九月、六甲山を登った。以前この地を訪れたのは30年以上も前である。それと同時に子供の時の記憶が呼び起こされた。これは誰にも言わなかった六甲山でのある事件である。当時10歳くらいの私が、誰にも言わず、ずっと心の中に隠してきたことなのである。それを今ここで打ち明けようと思う。

 阪急六甲にある祖父の家に遊びに行き、私と兄と母とで六甲山に登った時の話である。その当時も同じ頃の季節だった。六甲山牧場でウシとヤギと戯れ、ソフトクリームを食べた。その後、植物園に行ったとき、私は兄と母とはぐれてしまった。その時、林の中に何かが見えた。白いシカか何かの動物だと思って、私は林の中にその後を追った。そこに見えたのは、白っぽい小さな少女だった。

 不思議な体験であった。その数年後になって妖精というという言葉を知ったが、本で見るような羽はなかったし、今思うにアリエッティほど小さくない。子供っぽい空想力で作り話をしているわけでない。いたのだ。子供ながらにこの話を他の人にすると、嘘つき扱いされると思い、大切に心の中に秘めてきた。「見えるべきものでない何か」が存在した。その頃は、木曜スペシャル全盛期の時代ではあったが、やらせではなく小人を発見したのだ。

 地球に生命が誕生して37億年といわれている。これまで人類によって発見された生物は百数十万種を上回る。 だが現代において、いまだ発見されていない生物は800万種以上と言われており、地球全体の15%の生物しか確認されていないそうである。 そして毎年3000種以上の新種生物が発見され続けている。

 今回の作品は「羽のない妖精」を証言するため、再現写真/映像を制作した。昨年六甲山に行った時に、それをふと思い出した。出会ったその彼女は最初悲しそうな表情を浮かべながら、ちょっと姿を見せたり隠れたりしていた。最後に見えなくなる前に、少しだけ微笑んだように思えた。

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